関東フラグメントと関東平野の直下型地震 (立川断層は活動周期の半
関東地方のプレートテクトニクスでは、
従来は、
『日本列島全体を乗せているユーラシアプレート*1の下層へ、南東から冷たい太平洋プレートが沈み込んでいて、その2つのプレートの間に南から伊豆半島や伊豆諸島を乗せた浮力のあるフィリピン海プレートが関東平野北縁までめり込んでいる』
と解釈されていて、一般的なプレート境界を震源とする地震以外にも、太平洋プレート内部やフィリピン海プレート内部を震源とする地震も多いとされてきました。
しかし、関東地方の地震の震源分布を3次元で解析してみると、フィリピン海プレートは東京湾下までしか延びてなく、代わりに埼玉県を中心として関東平野と似た形をした、どのプレートにも属さないブロック(関東フラグメントと命名)があるのではないか。
そして、このように考えると従来はプレート内部を震源としていた地震が、プレートと関東フラグメントとの境界を震源とする地震としてとらえられるようになり、よりすっきりと説明できることが分かってきました。*2
今回の東北関東大地震により、この関東フラグメントの周囲にも各プレートとの間にズレによるエネルギーが溜まっていく事が予想され、今後暫くの間は関東フラグメントと他のプレートとの境界型地震の発生が危惧されます。
ただ、太平洋プレートとユーラシアプレートが直接に対面している東北大地震とは異なり、関東フラグメントという緩衝材を介しての衝突であることから関東フラグメント境界型地震の想定地震規模はM6程度と比較的小さく予想されること、またこの関東フラグメントは太平洋プレートに乗ってきているため震源が比較的に深くなるということから地上の震度も比較的に小さくなることが予想されます。
しかし、この関東フラグメント地震が地盤断層を刺激して、いわゆる首都直下型地震を誘発することは否定できません。マグニチュードの割に被害が大きくなりやすい直下型地震が予想されること、マグマ上昇による火山活動活発化の可能性も高いことなどもあり、やはり注意していきたい地震だと思います。
ちなみに、
富士山の噴火に関しては、歴史的な研究の結果、2週間位前から火山性の群発地震(15kmから20kmと浅く、低周波)が発生することが分かっており、現在では最低でも噴火の1日前には予測できるとされています。
*1 正確にはユーラシアプレートは、フォッサマグナ以西のアムールプレートと東北地方が乗るオホーツクプレートからなる。
*2 遠田晋次「2005,関東の地震テクトニクス再考:新しいプレート構造の提案」(http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20050610/nr20050610.html)ほか
『プレートの重なり順』
ユーラシアプレート
↑フィリピン海プレート↑
関東フラグメント
←太平洋プレート
- -
【考察】
「関東フラグメント境界型地震の被害」
・ユーラシアプレートvs太平洋プレートといった東西大横綱級プレートの直接対面よりも、フィリピン海プレートや関東フラグメントといった関脇小結級プレートがあった方が、緩衝となりM7以上の大地震は起こりにくいと考えられないか。
また関東フラグメントは深いところにあるため、関東フラグメント底辺で発生する地震もその震源は深くなります。これらの事から関東平野を震源とする地震では大震災にはなり難いのではないか、と思います。
「立川断層の心配」立川断層帯の位置 http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f034_ichi.jpg
・また水平ずれが無く北東側の隆起が大きい立川断層*3 の特徴や、多摩川が立川となっている理由も関東フラグメントの影響で武蔵野が隆起しているとすればうなづけます。
・立川断層の原因が関東フラグメントによる隆起だったとしたら、活動再来周期は変わってくるのでしょうか。気になります。
まさか、このページを見た訳では無いでしょうけど‥
何%か算出できていない?!って、この国の科学はいったい、どうなってしまったの?
政府の地震調査委員会は6月9日、双葉断層(宮城県、福島県)と立川断層帯(埼玉県、東京都)、糸魚川―静岡構造線活断層帯の牛伏寺(ごふくじ)断層(長野県)について、将来の地震発生確率が高まる可能性がある、と発表した。
東日本大震災による地殻変動の影響で、国内の主要な断層帯で地震を起こしやすくなったかを推定した。ただ、具体的に何%上昇するかは算出できていない。
‥と思ったら別の記事
立川でM7.4!そんな軽々しく言うなよ。それに立川断層と言っても青梅や瑞穂の方が断層活動の痕跡は顕著だよ!
これまでの長期評価によると、牛伏寺断層(長野県松本市・塩尻市、長さ約17キロ)で想定される地震の規模は、同断層を含む「糸魚川―静岡構造線断層帯」が動いた場合にマグニチュード(M)8程度と大きく、今後30年間の地震発生確率も14%と高い。
立川断層帯(埼玉県飯能市から東京都府中市、約33キロ)はM7.4程度で30年間の地震発生確率0.5〜2%とやや高く(補注:政府は立川断層帯で地震が起こると、48万棟が倒壊し、死者6300人と想定している)、
双葉断層(宮城県亘理町から福島県南相馬市、最長40キロ)はM6.8〜7.5程度でほぼ0%とされていた。
という訳で立川断層の最近の発表を調べてみた。活動間隔の詳細な調査が待たれます。
「マグニチュード:7.4程度 30年以内の地震発生確率:ほぼ0.5%〜2%」地震調査研究推進本部(2011)*5
「最新活動時期:13,690〜12,840年前 活動間隔:不明 変位量:2.6m」宮下ら(2007)立川断層の最新活動時期. 地学雑誌,116(3/4), p.380-386
「最新活動時期:20,000〜13,000年前 活動間隔:10,000〜15,000年」地震調査研究推進本部地震調査委員会(2003)
「立川断層は活動周期の半分にも達しておらず、近い将来活動する可能性はほとんどない」東京都土木技術研究所(1998)*4
「M7.1」山崎(1978)*3
*3 山崎晴雄 (1978) 立川断層とその第四紀後期の運動. 第四紀研究 (The Quaternary Research) 16 (4) p.231-246(http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jaqua1957&cdvol=16&noissue=4&startpage=231&lang=ja&from=jnltoc)
*4 東京都土木技術研究所(1998)立川断層に関する調査. 平成9年度地震関係基礎調査交付金 成果報告書 153pp(http://www.hp1039.jishin.go.jp/danso/Tokyo2Afrm.htm)
*5 地震調査研究推進本部(2011)関東地方の地震活動の特徴 http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/kanto/kanto.htm
「関東平野の広さ」
・「なぜ関東平野は大きいのか」昔から疑問だったのですよね。その答えの一つが関東フラグメントかも知れません。
「横山の理由」
・多摩のよこやまはフィリピン海プレートによって隆起させられている!?潜り込むというより正面衝突。だから、よこやま、なのですね。
「国分寺崖線の大きさ」
・武蔵野台地は関東フラグメントだったのですね。河岸段丘である国分寺崖線の規模が大きい理由がわかった気がします。
※国分寺崖線は活断層ではありません。川が削って出来た単なる崖です。ご安心を。
「蛇足」
・私だったら「武蔵野フラグメント」と命名したかも。